第9章 ハジメテ ✢
「……だよね。避妊のこと…ごめん。」
「お願い。今日はもう帰って。頭痛いの。
玄関にある傘、どれでも使って良いから。」
蜂楽は無言で服を着た後、部屋を出る時に、
「夢ちゃん、俺……夢ちゃんのコト、ちゃんと大切だからね。」
そう言って出て行った。
その後ろ姿すら、見ることができなかった。
部屋のドアが閉まった後、声を押し殺して泣いた。
「…………っっ!!」
蜂楽……蜂楽……
笑いかけてくれる蜂楽。
自分のこと話してくれる蜂楽。
キスしてくれる蜂楽。
私で感じてくれる蜂楽。
サッカーしてる蜂楽。
全部、全部、全部……
大好きなのに……!!
「はぁっ、はっ、はぁ……!!」
息が、ゆっくりできない。
胸が、苦しい。
頭が、痛い。
体が……寒くて、熱い。
また……過呼吸だ。
しかも雨で風邪ひいたな、絶対熱ある。
ハイになったのは、そのせいだ。
考えられるのは蜂楽のことだけ。
「はぁっ……ばち、ら……かはっ!廻ぅ……!」
涙が全然、止まらないや。
でも、本当に泣きたいのは……
廻のほうだよね?
どうやってベッドに入ったか、記憶にない。
上半身裸のまま、布団をかぶって……
勝手に眠りについてしまうまで、乱れた呼吸で泣き続けることしかできなかった。