第8章 だいじょーぶだよ
「俺、夢ちゃんのコトだいすき。夢ちゃんがいなきゃ俺、マジで生きてけない。」
キスが終わったままの至近距離、おでこにおでこをくっつけられて低く囁かれた。
「……ん、知ってる。」
黄色の綺麗な眼の中に、私がいる。
蜂楽も今……
私の眼に、同じものを見てるのかな───?
一瞬の、触れるだけのキスを、蜂楽にされた。
このリップ音が鳴るキスで……
ふたりのスイッチが入る。
「夢ちゃんの声、高いのに静かで、なんか甘々してて……めちゃめちゃエロい。」
心臓……
うるさい。
「雨に濡れて下着スケスケだし。
えっちしよって……言ってるようなもんじゃない?」
これ以上は……もうダメ。
体が熱くて燃えそうだ。
それなのに……恥ずかしいのに……
蜂楽から、一瞬たりとも眼が離せない───。
「ごめん、風邪ひいちゃうね。とりま送るわ。」
そう言って立ち上がる蜂楽は、とても大人びてた。
けど、私は知ってる。
荒ぶる感情を抑えてそう振る舞ってくれてること。
流し目の切ない表情が、低い声の静かな話し方が……
蜂楽の“男”を、悔しいくらいに引き立てる。
立ち上がった蜂楽のジャージの裾を掴んだ。
「廻と……もっと、いたい。
雨宿りの良い場所なら私、知ってるよ?」
蜂楽は眼を細めてニッと笑い、私に手を差し出した。
「案内お願いしやす♪“ニセ彼女”ちゃん?」
もう友達になんか、戻れない───。