第8章 だいじょーぶだよ。
蜂楽は泣いていた。
涙を見たのは、これで2回目だ。
数メートル先の蜂楽の元へ駆け寄った。
駅からたくさん走って、雨を含んだスニーカーが重い。
傘代わりに使った脱いだブレザー。
たくさんの雨を弾いてくれたが、風向きが悪くて結局シャツも髪もたくさん濡れた。
「はぁっ…廻っ、探したよ…!既読付かないし…!」
「夢ちゃん……ごめん。スマホ見てない。」
蜂楽が座り込む橋脚のたもとまで、やたらと距離が長く感じた。
雑草の生い茂った河原が歩きづらかっただけじゃない気がした。
「俺って……変かな……?」
また俯いて、長めの前髪で涙目を隠す蜂楽。
純真な涙の粒が、頬を伝った。
「廻が変なら、私も変だよ。前にも言った。」
蜂楽を正面からハグした。
地面に直接座る蜂楽をすっぽりと包み込みたくて、私は膝立ちになった。
河原の小石が膝に食い込んでも、蜂楽の痛みに比べれば全然痛くない。
「……落ち着くまで、こうしてよ?」