第7章 自由の才能
“今度の試合来てくれたら、俺頑張っちゃう♪”
あれからずっと考えてる。
サッカー部の試合……どうしよう。
「夢ちゃん、おまたせー♪」
毎日の約束の待ち合わせ場所、玄関前の木の下に、今日も蜂楽は走ってやって来てくれた。
一週間前の昼休みに唇を奪われた蜂楽とは、意外といつも通りに過ごせていた。
それまでと変わらない、彼の明るさのお陰だった。
蝶野くんとは、生徒会で顔を合わせづらくなった。
蜂楽と私のせいだけど。
冷静になると申し訳なさを感じたけど、プライドの高い彼を更に傷付けそうだから、今はそっとしておこうと思ってる。
「あれ廻。顔に泥ついてるよ。」
蜂楽の顔に付いた泥を、指先で拭ってあげた。
「あんがちょ♪突き飛ばされた時についたんかな。」
「つ……えぇ!?そんなことされたの!?」
「うん。でもこーゆーの昔からで慣れてるし、俺は全然気にしてないよ。」
運動部の男子って……こんなもんだっけ?
中学の頃やっていた、野球部のマネージャー時代を思い返してみる。
ウチのサッカー部は、いつも県大会の上位までいってるなかなかの強豪。
いきすぎた指導とか、されてなければ良いけど……。
「なーんか最近、目ぇ付けられちゃってるカンジ。
3年の蝉川(せみかわ)ってヤツ。知ってる?」
───あ……ダメ。
その名を聞くと……
私は、自分を見失う。
せっかく蜂楽に出逢えて……
少しずつだけど、心を開けるようになってきたのに───。