第31章 契約破棄
蜂楽を起こして、優さんを一緒に見送った。
「いってらっしゃい、優!」
「廻も!楽しくサッカーしておいで!」
ハグし合うふたりを見て、切なくもほっこりした。
いつも通り、ふたりで学校に向かった。
バイトがない今日は徒歩で…しっかりと手を繋いだ。
何気ない日常の一瞬一瞬が、今日は愛おしい。
「夢ちゃんと久々に手ぇ繋いで歩けた!」
「だね。今日も昼休み、一緒にいよ?」
「うん♪」
昼休みに一緒にお弁当を食べて、陽だまりのベンチで寄り添い合った。
外ハネの毛先が顔に当たって、くすぐったい。
この肩に寄り掛かれなくなると思うと寂しいけど…
寂しいって言うともっと寂しくなるから、言わない。
「今日、部活は?いつも通り?」
「明日から合宿だからサボろうかな。」
「見学行くつもりだったのに。廻のサッカー観たかった。」
「んなら一緒にやろ?サッカー。」
「え?」
「俺と夢ちゃんの家で♪」
授業が終わった帰り道、また手を繋いで歩いた。
こんなに早い時間にふたりで帰るのなんて何気に初めてで、今日限定の特別感が変な感じ。
蜂楽が庭で技を練習している間、私はパイナップルケーキを作る。
せっかく焼くなら今日かなって思って、サプライズではなくなったけど、温めてた計画をやっと遂行した。
パウンドケーキの焼型に生地を流し込んでいると、ふと不透明な不安が襲ってくる。
期間の記載がない合宿。
もうずっとずっと逢えなくなる……
なんてこと……ないよね───?