第28章 兄と妹
「頭痛はまだするか?病院行くか?」
「……もう、大丈夫、です……。」
夕飯前の時間帯、お客さんのいない“K.K.”の店内。
ふらつく体をマスターに支えられながら、テーブル席に座った。
大丈夫と言いつつ、頭がまだ痛くてクラクラする。
蜂楽について。
今は正直……よく解らない。
まだ……頭の中の酸素が足りてない。
愛してるから、壊されていいと思った。
でも今になって、それが解らなくなってる。
バックヤードへ行き、自分のカーディガンを持ってきたマスター。
シャツのボタンを千切られた、私の胸元を隠すように掛けてくれた。
「待ってろ。」
紅茶の茶葉の缶をカパッと開ける。
あんなことをされた直後なのに、
彼が淹れてくれる紅茶を楽しみにしてる。
感情の秤が狂ってて……わけわかんない。
“俺の大事な‘妹’に二度と近付くんじゃねぇ。”
さっきマスターは、私のことを“妹”と言った。
首を絞められた酸欠の頭でも、それは判った。
「……あの、マスター。“妹”って……?」
ニルギリの茶葉を、ティーポットで蒸らしてる。
レモンのスライスを冷蔵庫から出したから、
今日はレモンティーだ。