第23章 がまん【蜂楽視点】 ✢
「……なに、してんの……?廻……。」
夢ちゃんが、消えそうな小さい声で言った。
「だいじょーぶだよ。ナカ出してないし。」
射精の瞬間の、強烈な快感は忘れられない。
だから、俺は間違ってないよ?
俺のコト、信じて?
「……廻のバカ。もう……知らない。」
「落ち着いて?我慢汁で妊娠なんてしないから。
だいじょーぶ。」
泣きそうな顔でシーツを握りしめる夢ちゃん。
とりま頭なでなでして精子を拭いてあげると、
俺からティッシュを奪って自分でやり始める。
「……私、優さんとこ戻る。
廻の服、いま同じ階のコインランドリーの中だから、後で自分で取りに行って。」
さっさと着替えて部屋を出た夢ちゃんは
きっと、冷静に振る舞うことに全神経を注いでた。
ゼッタイ俺に幻滅してるよね?
俺の眼をしっかり見てよ。
この間、あのマスターに見せてた無防備な笑顔を
どうして俺には……くれないの?
───夢ちゃんを愛してるから。
それ以外、この“行為”にワケなんてない。
って俺、なに焦ってるんだろ───?
「……つか、どーやって服取りに行こ。他に着るもの、なんもない。」
優と夢ちゃんがココに戻るまでの間
このモヤモヤを振り払いたい。
忘れてた旅の疲れが、どっと襲ってきた。
だからこれ以上、ゴチャゴチャ考えないで……
すんなり寝落ちできそうで……よかった。