第22章 一日一顔 ✢
「行ってきます!」
「バイト頑張ってね、夢ちゃん!」
「廻も楽しくサッカーしてきてね!」
「うん♪」
個展の準備で忙しい優さんに代わって、私と蜂楽で洗濯と朝ご飯の準備をこなす。
尾行の犯人もまだ判ってない。
念のため蜂楽に“K.K.”まで送ってもらって、夏休みの一日は始まる。
蜂楽は送ったそのまま部活に参加したり、近場をドリブルで走ったりして自由にやってるみたい。
「夢。これ5番。」
「はいっ!」
平均して、お店はそこまで混まない。
閑古鳥が鳴く程ではないけど……
即決採用してもらって良かったのかな、と思う。
出勤初日でまだ名乗ってもない私を、マスターはいきなり下の名前で呼んだ。
早くも、一週間前のことだ。
『え!どうして私の名前…!?』
『お前がココに初めて来た日、母親が呼んでたろ?夢って。』
『ま、まぁ言われればそうですね…。』
『苗字は知る必要ない。よろしく。』
と、いうことらしい。
20代後半くらいの男の人から、いきなり下の名前で呼ばれることに少し抵抗はあったけど。
数日バイトしてみて、ぶっきらぼうだけど軽薄ではないマスターなら、まぁいいかと思えてきた。
「お店の名前、どういう由来なんですか?」
なんとなく気になってた。
夕飯前、お客さんが途切れた時間帯。
特にやることがなくなったタイミングで、私はマスターに聞いた。