第22章 一日一顔 ✢
「この部屋、空いてるから自由に使って!少し物が置いてあるけど、適当にどかしていいからね!」
優さんは、部屋のドアを開けて言った。
まさか私専用の個室があるなんて……。
リビングで寝たりするのかな、なんて、勝手に思ってたのが逆に申し訳ない。
「……ありがとうございますっ!」
「ベッドは余分になくて布団だけど、体痛かったら言ってね。」
「大丈夫です!家事、何でもやります!!今日からよろしくお願いします!!」
学校は一学期の終業式だった。
今日から夏休みだ。
私が蜂楽の家に居候を始めたのは、その日の夕方だった。
ボストンバッグひとつの、最小限の荷物。
夏休みに入ったから、学校のものはひとまず自宅に置いてある。
今日からここで、新しい夢を描いていく。
私の新しい人生のスタート地点。
優さんには、感謝してもしきれない。
「愛しの夢ちゃーん♡アーンド夏休みー♪
いえーいっっ!!」
開放感を全身で体現した蜂楽が部屋に飛び込んできて、つられて胸が躍る。
「今日から改めて、よろしくお願いします!」
「よろ♪改まんなくていいっしょ。
一緒に楽しく暮らそうね。“ニセ彼女”ちゃん?」
すっと後ろを取られてハグされる。
子供みたいなはしゃぎ声から、含みを持った低い声へと変わっていく。