第20章 束縛の糸 ✢
「今日は本当に楽しかった。」
「俺も♪」
玄関で名残惜しくキスを交わす。
明日の片付けにも来てくれるという蜂楽。
それぞれの家のひとりのベッドで眠るというだけの時間が、もはや寂しい。
「明日の朝、また迎えに来るね♪」
「ありがと。遅いから、帰り気を付けてね。」
10時間と少し。
たったそれだけ離れるだけで、蜂楽が遠く感じる。
「決められて良かったね♪アシスタントのこと!」
───そうだ。
寂しがることなんてない。
これからは好きな人とも、夢とも
一番近くで……一緒に生きられる───。
「うんっ!」
濃い一日だった。
手に入れたものが、たくさんあった。
「これからは、もっともっと……ずーっと一緒にいられるね♡」
ハグし合って、数時間の別れのキスを再び交わす。
「んっ、ん、ん」
「は、んっ、ん♡」
何度キスしても最後の一回が決められなくて、唇の啄み合いが止まらない。
この甘いキスが……ふたりの文化祭の締めくくり。
一生忘れられない思い出になった。
昼間の文化祭で、蜂楽からスマホに来たたくさんのメッセージ。
何度も鳴ってたその通知音に混じって
父からのメッセージを受信していたことに
私はまだ、気付いていない───。