第20章 束縛の糸 ✢
「シメ、サイコーだったよん♪夢ちゃん!」
手を繋ぐ帰り道。
口角を上げて猫みたいに微笑む蜂楽は……
昼間とは別人だ。
「ありがと。全部、廻のお陰だよ。」
ステージ上でのキスの後。
何組かカラオケで歌ってから、締めの挨拶をした。
そこでも声掛けや拍手をたくさん貰った。
プレッシャーからの解放。
そしてあの蜂楽のスピーチと公開キス効果。
すごく、フワフワした。
後夜祭が終わってから、簡単に済ませた後片付け。
テントや学校備品の片付けは、明日本格的に行う。
大きな出来事を経験して、気分の高揚は今もまだ続いてる。
「昼間はごめん。」
「私もごめん。」
「知らないヤツから急にされた。」
「そーゆー子なんだよ…。」
「夢ちゃんは?断った?」
「ん?何を?」
「部下メガネからの“大事な話”。」
「あー。特に引き止められなかった。」
「アイツ、また俺にビビったんじゃん?」
「かもね。」
いつもより早口な蜂楽と、テンポ良く言葉を交わす。
たぶん、いっぱい話したかったんだろうな。
このシンプルなセンテンスにだって私と蜂楽の、
最初で最後の文化祭の思い出が詰まってる。
蝶野くんのことは、少し心配だったけど……。