第18章 ムカツク【蜂楽視点】 ✢
『夢ちゃん?』
夢ちゃんが走っていくのが見えた。
可愛くヘアアレンジされた後ろ姿が……
なぜだか朝とは、違って見えた。
『あ、コラ。よそ見してるー。』
いきなり物陰に呼び出してキスしてきた、知らない女子が言った。
『つか誰?いきなりキスとか意味わかんない。俺、カノジョいんだけど。』
『ひどっ。同じ2年じゃん。文化祭の時くらい彼女のコト忘れて楽しもうよぉ。』
ツケマだかマツエクだかしてる、バッサバサ睫毛が付いた眼をパチパチさせる。
香水キッツいし、可愛くないっつの。
『蜜浦先輩(かのじょ)のコトならよーく知ってるよ?あたし同中で、野球部のマネ一緒にやってた。』
前に夢ちゃんが言ってた。
中学の時の後輩マネが、ずっと好きだった人と付き合ってた、って。
『つっまんないでしょ?あの人。あたしと付き合えば、アッチも楽しいよ?ばちら♡』
うっせぇな……なんじゃい、この女。
『てかあんな地味女とエッチしてんの?あはっ!
想像できなーい!なんか不感症っぽ!』
俺と夢ちゃんのコト……
お前みたいなケバメイクモブに、何が理解んだよ。
あー……もうウザい。
『どーせ炎上目的で、俺とヤりたいんだろーけど。
俺、香水どぎつケバケバ女とかマジ無理だから。』
唇を手の甲で拭うと、化粧のギトギトが付く。
『ヒトのモノ奪って遊んでるだけの拗らせクソビッチが、俺と夢を引き裂けるワケないっしょ。
セフレ探してんなら他のヤツ当たってくんない?マジ迷惑。』
そいつを振りほどいて、冷めた眼で睨んだ。
そんですぐ、夢ちゃんを生徒会室まで追いかけた。
───のに。