第15章 おそろい ✢R15
夕飯の準備をしている時、優さんとふたりきりになるタイミングがあった。
「廻と、愛し合ってるんだね♡」
ニヤッと笑った優さんに、首筋の跡を指差された。
「んぇっ!?あ、愛……!!こ、こちらこそっ、お世話になって、ます……!!」
恥ずかしすぎて、包丁を持つ手元が狂うかと思った。
直球すぎるし、見透かしたように笑う優さんが綺麗だし恥ずかしいしで……動揺が止まらない。
「廻ー。夢ちゃんのこと、泣かせたらダメだからねー?」
「ほーい!解ってまーす♪」
トイレから出てきた蜂楽に、優さんは言った。
「夢ちゃん夢ちゃん!俺のキスマ薄くなってきたから、もっかいお願いしやす♡」
「ちょっ、廻…!!今、言う!?」
「コッチももっかいおそろにしたーい♡」
「あははは!見せつけてくれるね!でも学校行く時は隠しなねー?」
優さんも蜂楽も、いつも通りのありのままだ。
気まずい空気なんて、この母子には縁のないことなのかもしれない。
優さんが蜂楽のこと、蜂楽が優さんのこと。
きっと、心から信頼してるからこそ成り立つ関係。
“廻は誰かを傷付けたりしない”って……
優さんが、無条件に信じてあげてるから。
ウチとは本当に真逆だ。
私は両親に、何も解ってもらえてない。
私自身、諦めてもいる。
オープンに開けた、子供が主役の家。
居心地が、良い。
もしかしたら、ここにいれば……
ここで夢を、追いかければ……
私は私のままで、いられるのかな?
底なしのふたりの明るさに、私も顔が綻ぶのを抑えきれなかった。