第15章 おそろい ✢
久しぶりにぐっすり眠れた夜だった。
私に密着して親指をしゃぶる“ニセ彼氏”が可愛くて、髪をそっと触る。
映画を観た後、私のベッドにふたりで入ってたくさん話をした。
私は蜂楽に、蝉川とのことを初めて告白した。
蝉川からどんな風に聞かされたかは判らないけど
私の目線で、私の言葉で……全てを伝えた。
毎日飲んでた紅茶が飲めなくなったこと。
好きだった蝉川と自分を最後まで信じたかったこと。
アフターピルを何度か飲んだこと。
両親と私の希薄な関係のこと。
常に持たされているゴムのこと。
蜂楽はずっと腕枕をして頭を撫でながら
“うんうん”と相槌を打って聞いてくれた。
過呼吸になる程の辛い記憶だったのに
不思議と冷静に話せた。
温かく抱きしめてくれる蜂楽が
負の感情を和らげてくれたんだと思う。
“私、バカだった”と言ったら……
腕ですっぽり包み込んで、温かい胸に埋めてくれた。
SNS投稿の犯人は蝉川だと判ったけど……
尾行が誰の仕業か、まだ不明だ。
親に相談するのは少し緊張するけど……
落ち着いたら、メッセージを送ってみようと思う。
蝉川とのことは話すべきではない、話せない。
そう思っていた。
でも今は、蜂楽に全てを話せて……
ほっとしている。