第14章 ニセモノのやり方 ✢
トントントン…と、耳当たりが良い野菜を切る音。
ちゃんと料理をするのは、久しぶりだ。
最近は食欲がなくて夜は殆ど食べてなかったけど、今は大好きな人のために料理を作ってる。
「(蜂楽、喜んでくれるかな…。)」
毎日のお弁当の時にはおかずを余分に作って持って行ってるけど、こうしてちゃんと料理を作ってその場で食べるというのは初めてで少しドキドキ。
いつかの帰り道、
缶詰めのパイナップルが好きだと言っていた蜂楽。
親宛に貰うお中元・お歳暮ギフトあるある、缶詰めパイナップル。
それとたまたま冷蔵庫に入っていた豚肉で、酢豚を作ることにした。
“廻は、酢豚にパイナップル入れても大丈夫派?”
いまひとりでお風呂に入っている蜂楽に、ドア越しで聞いたこと。
酢豚のパイナップルって、好き嫌い分かれるから。
“ナイスパイナップル♪”って答えてくれた蜂楽。
酢豚でパイナップルは脇役だけど。
お肉を柔らかくする重要な役目を担っている。
好きな人の好きな食材で、好きな人を想って作る。
それって、すごくハッピーになれる。
“……俺と一緒に、おフロ入る?”
なんで蜂楽はひとりでお風呂に入っているのかって?
理由を思い出すのも恥ずかしい。