第12章 かいぶつ【蜂楽視点】
俺らの異常な状況に気付いたヤツらが、いつの間にかギャラリーになってた。
ウチの部も他部の人も集まって、ザワついてた。
イチかバチかだったけど。
蝉川をもっと粉々にぶっ壊すアイデアを……
俺と“かいぶつ”は思いついてしまった。
「女子のみなさーん!コイツに恨みがある人は、今がちゃんすだよーん♪
へし折られたてで弱ってまーす!とくに股間が♪」
ギャラリーの中から5、6人の女子が出てきて、
テニスのラケットとかソフトボールとかを股間に投げつけて乱闘騒ぎが始まった。
やっぱコイツ、そーとークズだった。
アガったわぁ……
あの恐怖と痛みに歪んだ表情。
ほーんと、クセになっちゃいそ♪
✢✢✢
「……蜂楽。お前、とりあえずもう帰れ。」
「あーい。そのつもりでーす。」
騒ぎを知った監督に、大目玉を食らった。
でももういいや、合宿なんて。
もともと意味ないクソ合宿だし。
サッカー部辞めろでも、停学でも……
どんとこいっつーの。
俺には、夢ちゃんがいる。
サッカーは、ひとりぼっちでもできる。
俺は、だいじょーぶ!
「処分は追って連絡する。それまでは部活参加禁止だからな。」
「あいあい。」
俺はこんなチームより……
夢ちゃんが何よりも大切なんだ。
絶対これで終わらせないからね。
待っててよ、夢ちゃん。
まだ降り続けていた雨が、熱くなった体を冷ましてくれる。
俺は夢ちゃんの家に足を急がせた。