第11章 ビター ✢R18
「サッカー部ー!!集合しろー!!」
その時、遠くで男子の声が響いた。
その声ではっとする。
自分でも知らないうちに泣いていたみたいで、頬には涙の筋の冷たい感覚が残っている。
「……ごめん。俺、どうしたんだろ……。」
我に返った蜂楽は、戸惑いながら私から離れた。
蜂楽は、今にも泣きそうだった。
この空模様みたいに。
「……俺、合宿いくよ。」
低い声が震えてる。
涙を必死で堪えているような、苦悩に満ちた顔。
俯いて、前髪で表情を隠された。
「……気を付けて、ね。」
「……たかが合宿っしょ。」
気まずい雰囲気のまま、蜂楽は合宿へ向かった。
サッカー部の男子達の中に混じる蜂楽は、違う人に見えた。
“あの日の蜂楽の行動は‘衝動性’そのものでした。”
試合の日の、蝶野くんの言葉を思い出す。
「……苦いよ。」
蜂楽に噛まれた首筋がひりつく。
食い込む歯の痛みと、ぬるっとした舌の感触。
それに、最後の表情が……頭から離れない。
蜂楽は泣いてしまうと、勝手に思っていたのに…
泣くのを必死に堪えていた、あの表情を。
「会議……行かなきゃ。」
涙を拭って、乱れたシャツをスカートの中にしまった。
頭の中は真っ白だったのに…
脚は不思議と、勝手に生徒会室へ向かっていた。