第10章 わすれもの
「……えと。今日はエッチの続きできないよ?」
「解ってる。こうしたいだけ♡」
昨日なんて、あんなコトまでしたのに。
蜂楽とのハグには、いつまでもドキドキしてしまう。
「今日も会えて嬉しい。」
蜂楽は…
私が耳元で囁かれるのが弱いこと、絶対知ってる。
「夢ちゃんの色んなところ見せてくれて嬉しい。
気持ち、伝えてくれて嬉しい。」
「……うん。」
蜂楽の吐息が、耳にかかる。
「苦しいことも悲しいことも、
一緒に乗り越えられたらもっと嬉しい。」
ツキン…と、胸に刺さる。
「……そうだね。」
自分の胸元で交差する、制服を捲った蜂楽の腕。
その逞しい腕を、私はキュッと掴んだ。
「俺達って、蜂蜜みたいだ。」
蜂楽は、感性豊かだ。
画家である優さんがお母さんなのがよく解る。
この甘さは、まさに蜂蜜。
ふたりを繋ぐ、愛の味。
「明日からも必ず昼休みに来てね。帰りも絶対一緒ね。約束だよ?」
「……ん、解ってる。」
「夢ちゃんの髪、甘い香りする。」
花の“蜜”に引き寄せられた“蜂”みたいに…
髪にキスされる。
斜め上の蜂楽を見上げたら、
そのまま唇にキスを落とされた。
コーヒーのほろ苦さは、感じない。
甘い甘い、蜂蜜の味のキスだった。