第2章 キラキラ
「今日も君の事を考えて退屈な授業を乗り切るよ」
彼の声が、彼の言葉が、頭の中で響く。
今、この授業中。
彼も私のことを考えてるんだろうか。
逢坂くん。
1年の時に彼と一緒のクラスだったコがいたから聞いてみた。
彼のこと。
地味だけど、穏やかで優しくて、頭がいい。
影でモテてるタイプ。
だって。
そんな素敵男子が私に夢中…って言ってたよね?
どういう意味なんだろう。
なんか文芸部に関係あるのかな?
考えてもわかんないな。
ていうか授業もよくわかんなかった。
ちょっと無理して藤城に入っちゃったからついていくだけで必死。
また放課後図書室で復習しなきゃ。
あ、今日一緒に帰るんだっけか…。
ていうかいいのかな?
よくわかんないのに一緒に帰るとか…。
すごい変な人なんじゃないの?
いいのかなあ…。
…
頭を冷やそうと休み時間、窓際で風にあたる。
2階の窓に5月の光が差し込む。
iPhoneのイヤフォンを耳にさす。
何も聴いてない。
話しかけないで、のサイン。
教室の女子のテンション高い話し声が聞こえる。
好きなバンドの話。
今度ライブに行くんだって。
校庭ではいかにもリア充な男子たちがサッカーボールと戯れてる。
そろそろ休み時間が終わる頃。
かったるそうにダベりながらジャージ姿の男子が何人か校庭に出てくる。
あんなふうにいちいちかったるそうにしないと体育の授業も受けられないんだよね、男子は。
あのジャージの色、2年だよね。何組かな?
なんとなくゼッケンを見る。
2年E組。
逢坂くんのクラスだ。
逢坂くんいるかな。
目で捜してしまう。
…
みつけた。
彼の黒髪が5月の風と光に照らされて眩しい。
私は思わず目を細めてしまう。
ふと彼が2階の窓を振り返る。
そして彼を見ている私を見つける。
少しだけ恥ずかしそうに彼はそっと微笑んだ。
私の耳から音楽が鳴ってないイヤフォンが落ちた。