第10章 夏休み!
一学期最後の日、私達は在来線を一時間半乗り継いで海を見に来た。
海水浴場でも港でもない海。
ただ大きな海がそこにある。
夏の太陽でキラキラ輝いて、どこまでもどこまでもキラキラキラキラしてる。
コンクリートの堤防を手を繋いで歩く。
「USJ行きたかったなぁ」
逢坂くんが呟く。
彼の髪が潮風にサラサラとなびく。
「無理だよ泊まりは。親、許してくれない」
波の音が大きいからちょっと大きい声で答える。
「うん…」
彼が残念そうに頷く。
「それに…私そろそろ本格的に受験勉強始めようかと思って。頭悪いから早めにやらないと」
私がそう言うと、彼はちょっと寂しそうに首を傾げる。
「ふぅん…。でもそんな一生懸命勉強しないで適当な女子大にでも入ればいいのに。…どうせ結婚するんだし」
「ふふっ」
意外と男尊女卑な彼の言葉にちょっとウケる。
実は私もそう思ってたんだけど。
「それでもいいんだけど…」
ちょっと恥ずかしいけど私は続ける。
「私、逢坂くんと同じ大学に行きたいなぁと思って。無理かなぁ」
彼がちょっと驚いた顔で私を見る。
やっぱりちょっと自信がなくなってくる。
彼がにっこり笑って私の手を握り直す。
「ううん。頑張ろう!」
「うん!」
彼の言葉に勇気が湧いてきた。
繋いだ手をちょっと大きめに振り、歩く。
「でも時々デートしようね。勉強付き合うから」
彼がちょっと甘えるように言う。かわいい。
「うん!今度は泳げる海行こうか」
「うん」
私達はちょっと立ち止まり、顔を見合わせて微笑む。
「逢坂くん!走ろう!」
「えっ?」
私は彼の手を繋いだまま走り出す。
「ちょっ…なんでっ?」
引っ張られながら彼も走り出す。
潮風が気持ちいい。
私達は声を出して笑った。
夏休みが始まる。