第5章 適性試験
継国はいち選手の士道龍聖とは違い、医療班総括という責任ある立場の人間だ。
いくら日本の至宝である糸師冴が欲したからといって、分かりましたとあっさり抜けられるものではない。
しかし、断るにしても問題があった。
「信用の問題?」
「うん。私はこのブルーロックの医療班メンバーや選手たちと、仕事をしていくうちに信頼関係を築いた。でもU-20日本代表側にはそれが無い。一時でも命を預かった身としては、あちら側を信用してもされてもいない冴くんと士道龍聖を見送ることはできない」
糸師冴が要求したのは2人。
1人は監獄内で誰も扱えなかったNo.2ストライカーの士道龍聖。
もう1人はドクターとして信用のおける継国。
奇しくもこの3人に共通するのは、行動で示すタイプの性格であり、初対面のU-20日本代表側の人間との相性は絶望的だ。
仲良くできるはずがない。
冴に要求されたと知ってから考えていたは、折衷案を絵心と帝襟に提案した。
「34人の原石共と國神錬介は他の医療班員に丸投げして、ちゃんはU-20日本代表側で糸師冴と士道龍聖の専属ドクターになるってこと?」
「早い話そうなる。3週間空けることになるから、何日かおきに様子を見に来る。あとはもう1人代打を寄越す」
「代打?」
「どんな人ですか?」
「私と同じだ。年齢にさえ目を瞑れば役に立つ」
「___って言ってたけど……」
絵心と帝襟、そして34人のストライカー達の前に現れたのは、3、4歳ほどのちまっこい女児だった。
しかも大きめの犬の背中に乗っている。
どこかで「もののけ姫やん」という声が聞こえた。
女児は犬から降りて皆の前に立った。
自分より何倍もでかい男達がほとんどなのに動じていない。
「つぎくにの代わりのリゼです。よろしくおねがいします」
ちょっと理解が追いつかない野郎共を横目に、女児と唯一交流のあったの幼馴染が動いた。
「リゼ嬢どしたの」
「えーたくんこんにちは」
「こんにちは。なんでここにいんの」
「ねえさまの代わり」
「代わり……」
乙夜もちょっと理解が追いつかなかった。