第3章 猛毒の情火(五条視点)
(五条視点)
幼い頃から、周囲の人間に対して一定以上の感情が湧かなかった。
同じ人なのに、違う生き物としての線引きがどこかにあったから。己の立ち位置や存在について、誰かに理解してもらうのは諦めた。
それでも、ゆめかを前にすると、抗えない何かに突き動かされる。あの時は異常だったと自覚はある。
こっちを見て欲しいと切望し、彼女の視界を独り占めしたくて、自然とスキンシップも多くなっていた。
恋心が独占欲に変わり、それが濁って執着に変わり、執着すればするほどゆめかのことが分からなくなって悪循環だった。
たびたびゆめかの愛情を試すようなことをしていたら、硝子に鼻で笑われた。
「いい年して構ってちゃんか。まるで母親の愛情を欲しがる子供みたいだな」
と、蔑みの視線を向けられて内心動揺した。
旧友曰く、僕は自分が思っている以上に寂しんぼだという。
どうしたら僕だけを見てくれるのか。それを考えるようになっていたあたりで、もはや愛ではなかった。
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