第13章 黒猫、揺蕩う
「ふぁあ…。」
「なんや眠そうやなぁ。どしたん。」
「どしたん、じゃないわ。昨日あの後君たちがしつこく聞いてくるから眠れなかったんじゃん。」
「そら気にもなるやん、高校生で男と同棲やぞ!いっそ男に同情するまであるわ。」
「が引っ越さんかったら俺らが一緒に暮らす世界線あったんかな。」
「あったかもわからんなぁ。お、スナリンいたいた。」
お昼少し手前。私たちは夕方の新幹線までスナリンを含めた4人でフラフラ遊ぶ事にした。とはいえ元々地元だし観光なんてことには興味なくて本当に遊ぶだけ。
私服に着替えスナリンと約束した場所へ向かえば既に居た。こちらに気付いた彼は少しだけ腕を持ち上げヒラヒラと手を振りながら吹き出す。何事かと後ろを見れば、侑と治の顔が"なんでおんねん"とばかりに歪んでいて私まで吹き出した。
「おはよう…双子の顔ヤバ。」
「俺らが誘っても全然来ぉへん癖に女に誘われたらホイホイ来よって!」
「女にデレデレしてる双子見れるんでしょ?面白そうじゃん。」
「ハァ?こちとら10年以上前から唾つけとった女やぞ!久々に会えればデレデレもするやんけ!!」
「まだそれ言ってんの?」
「何の話?」
「良くある幼稚園児の頃大きくなったら結婚しようね!ってやつ。」
「え、そんな約束律儀に守るタイプだったんだ。」
「シバくぞ。」
「なぁ俺腹減ったんやけど。そこの喧しい奴らほっといて飯行こうや。お前が好きそうなカフェ知ってねん。」
「ほんまに?行く行く!」
騒がしいなぁ、と思って2人を見てたら徐に手を捕まれ引っ張られる。顔を上げると治が何食わぬ顔で歩き始めた。私はそれにつられる形で隣を歩く。
「おいコラクソサム!誰が喧しいや!」
「お前以外に誰がおんねん。」
今にも喧嘩をおっぱじめそうな2人を横目に私は1度スナリンの隣へ並んだ。試合してる時はでかく見えるのに隣に並ぶとそこまで大きく見えないんだよね…猫背だからか。
「ずっと気になってたんだけどさ、スナリンって何で標準語なん?」
「あぁ、俺愛知出身なんだよね。スカウトされてこっち来ただけだから標準語。」
「あ、なるほど!良く関西弁移らんねぇ。」
「なんだかんだまだ1年だし。は俺と逆だったんじゃないの?向こうでも関西弁?」