第5章 空、覚えていますか?
加州清光は、朔夜の初期刀だ。だから一緒にいる時間は刀剣男子達の中で一番長いし、その分距離感も近い。
呼び方だってただ一人、「主」とかではなく気軽に「朔夜」と呼んでいる。
そんな清光が朔夜と出会ったのは、朔夜がまだ15歳かそこらの時だ。色々とあけすけな今とは違い、その頃はまだ可愛い女の子だった。
「うわー、すっごーい!本当にお城みたーい!!ねえ清光、ここが私たちの本丸だよ!!」
無邪気にはしゃぎながら天守閣に登り、一緒に仰いだ青空を、俺は未だに覚えている――。
朔夜が本丸に戻って来て、5振りの刀剣男子達は少しずつだが体力が回復していった。
山や川で手分けして食料を調達すれば、質素だけど食事にありつく事は出来るようになった。
それに夜はみんなでお風呂に入ってから雑魚寝すれば、朔夜の霊力を吸収しているのか、翌朝はみんなスッキリ起きられる。
とにかく政府からの資金が送られる来月の15日までそうやって乗り切ろう――と思って各々やる気を出していたら……朔夜がぶっ倒れた。
「あるじーーーーっっっ!!!」
「長谷部うるさい!!」
「薬研、主はんの具合はどうなん?」
国行がたずねると、薬研は神妙な面持ちで首をひねった。朔夜の症状はとにかく熱が高く、呼吸が荒くて息苦しそうだったが、不思議な事にそれ以外はどこにも不調は診られない。
「流行病ではないだろうが、風邪……でもねえな。とにかくちゃんとした医者に――」
「はあぁ~、やっぱりこうなりましたか」
「こんのすけ!?」
どこから湧いて出たのか、こんのすけは、やれやれと言ったふうに頭を振った。この事態が起こると分かっていたなら、何で事前に言わなかったんだろうと思わざるを得ない。やはり本丸を捨てた恨みを引きずって、朔夜を亡き者にしようと画策していたのかもしれない。
「皆さん安心してください。これは病ではありません、ただ霊力が有り余っているだけです」
「霊力が……?」
「有り余っている?」
どういう事だか説明させようと、5人はこんのすけを取り囲んだ。