第4章 今晩のおかずは鱚みたいです
――国行、お前って良い奴だったんだね。いつも蛍丸や愛染の世話になってる、まるで駄目な保護者。略してマダホじゃなかったんだ……。
そう言えば、この本丸には国行たち以外にも、特別仲の良い刀剣男子達が何人もいた。分かりやすく例えれば清光だ。
清光も、相方の安定と別れ本丸に残ってくれている。まあ清光は初期刀だからという、なんとなくだが理由をくっつける事は出来るが、国行はこれと言って理由とかなさそうだ。
「ねえ国行。国行はどうしてこの本丸に残ってくれたの?」
「ん~?今更そないなこと聞きますの?」
「いや~、ちょっと気になって」
「せやなぁ、まあ聞きたいなら話したるけど……」
「けど……?」
「その前に、茶ぁでも入れよか」
そう言って国行は厨房に姿を消した。
朔夜は何もすることがなく、縁側でただボーっと景色を眺めていた。本来ならこの縁側のすぐそばには池があって、鯉とかが泳いでいたのだが、今あるのは濃い緑色の藻ばかりだ。
他にも広大な畑は季節の野菜が植わっていて、皆で協力して収穫すると、旬の味をすぐに味わう事が出来た。
その光景を思い出すと、目から涙が出そうになった。慌ててぬぐうと、床板のきしむ音と共に国行が戻って来た。
「すまんなぁ、お茶っ葉が無かったから白湯で我慢してや」
「うむ、とく許す」
「ぷっ、何様や」
なんだか国行のほんわかゆるゆるオーラで、全てが許されていくような感じがした。この無気力オーラに体を委ねたい――ハッ、違う違う!国行がどうして本丸に残ってくれたのか聞こうと思ってたんだ。
「ねえ、もう一度聞くけどさ、国行は何でこの本丸に残ってくれたの?蛍丸も愛染も居ないのに」
「せやなぁ、自分で言うのもなんやけど、ホンマめんどくさがりで――」
国行は白湯を一口飲むと、真っ白い息を吐いた。
「めんどくさ過ぎて、こんな風に白湯すら飲まん。何日も何も食わんとずっと寝とったんや。そうしたらその内、腹の虫も鳴らん様になって、力が抜けていって――あ~、自分このまま死ぬんとちゃうかって思っててん。したらな……」
「うん、そしたら?」
「――走馬燈が見えたんや」
「そ、走馬燈ですか……」
それはだいぶイッちゃってるぞ、おい。
だが、この話はいったいどこに繋がるのだろう。国行の事だから蛍丸か愛染がらみかと思ったが、なんだか違うようだ。