第4章 今晩のおかずは鱚みたいです
「いただきまーす」
朔夜の目の前に並ぶのは、昨日着物と取り換えた野菜の煮物だ。朝早くから長谷部が調理してくれたらしい。それを有難くいただく。
そう言えば、昔は料理当番なんかも作って、みんなで代わる代わる交代で料理を作っていたのが、朔夜が本丸をほったらかしにしたせいで、その刀剣男子の殆どがいなくなってしまった。
ハッキリ言って100%自業自得なのだが、そう思うと、なんだか折角の朝ごはんも涙でしょっぱくなる。
「くうっ、ご飯が目に染みるぜ」
「主、何か俺の料理に落ち度がありましたか?」
「いや、ありません。全くありませんとも」
そう言いながら朔夜は煮物を平らげた。腹も満たされ、睡眠もばっちりとったので元気100倍!なのだが、早々に問題が起きた。
……ぐ~~。
それは朔夜の膳を下げようとした長谷部の腹から聞こえてきた。続いて傍に控えていた清光、今剣の腹からも同じような音が聞こえてきた。まさかと思うが――皆、ご飯を食べてない?
「あれ?……みんな、朝ごはんは?」
「やややだなー。俺達、朔夜より早く起きてもう食べちゃったよ?」
「そそそそうです!べつにがまんなんて……」
ぐ~……きゅるるるる……
ハイ、聞こえたよー。今剣ちゃんのお腹から可愛い音が聞こえたよー。かくなる上は――朔夜は指をパチンと鳴らし、圧制者の顔になった。
「長谷部、これは命令だ。今日の皆の朝ごはんは何だったか答えろ」
「ぐっ、主に申しますは――我々は主の食事を最優先するにあたり、食事を取っておりません」
「何という事……儂が不甲斐ないばかりに部下に飯すら食わせられんとはっ……」
「主様の甲斐性なしはもう言い尽くす事が出来ない程なので、今更落ち込むことはないと思われますよ」
「それになんです?その薄ら寒い芝居は」と、またも不意打ちで現れたこの極悪子ぎつねのこんのすけ。来るたび来るたび、朔夜のHPを削っていく素晴らしいヴィランだ。ある意味検非違使より性質が悪い。
「まあ無事に一夜を過ごされたそうですね」
「おうよ!我らのチームワークを侮ってもらってはこまる」
「チームワークと言いながら、悠々と1人で飯を食っていたのはどこの誰ですか?」
「やめておけこんのすけ、その攻撃は私に効く」