第2章 いい湯だな、あははん
「混浴かー……」
こんのすけ曰く、審神者は全身霊力の塊であり、云わば昆布の様なもの。その昆布の浸かった出汁風呂に入ることで、皆の霊力を少しでも補充しようというのだ。
まあ皆と一緒なら家族風呂みたいで気も少し紛れるし、きちんとタオルも巻いている。それに人間二十歳も過ぎればちょっと裸を見られたくらいでキャーキャー言わなくなるものだ。
「朔夜ー、入って良いー?」
「どうぞー」
ご丁寧に清光が声をかけてくれた。返事をすると、ガラッと戸が開き5人の刀剣男子たちが入ってくる。分かってはいたが皆ちゃんと腰に白い手ぬぐいを巻いているのを見て、朔夜は無意識の内にチッと舌打ちをした。
「なんか風呂って久しぶりー。いつもは水浴びばっかりだったからさー」
「かかかかか加州!貴様、恐れ多くも主に近すぎるぞ!」
「良いじゃんべつに。照れるような仲じゃないんだからさ」
初期刀だからか、清光は昔から朔夜との距離感が他の皆と比べて近い。長谷部に指摘され、ブツブツ言いながら清光は少し距離を取った。そこをすかさず今剣ちゃんが割って入ってくる。
「あるじさま。あとで、せなかながしっこしましょー!」
「ええな~。自分もまぜてぇや」
「あはは~、国行はなんか邪念を感じるから駄目です~」
なんだかんだ言いながらも、こうやって皆で一緒のお風呂に入るというのも楽しいものだ。……そう言えば、さっきから薬研の姿が見えない。辺りを見回すと、1人離れて必死に身体を洗っている姿が目に入る。
「薬研?何やってんの、こっちおいでよー」
「………気にしないでくれ」
「いやいや、この出汁風呂に浸からなきゃ意味ないよ?」
「後でちゃんと入るから大丈夫だ!」
勢い余ってこちらを振り向いた薬研は、顔を真っ赤にして下を向くと、またごしごし体を洗い始めた。それを見て、清光と国行が不敵な笑いを浮かべた。
「はは~ん、薬研。お前さては……」
「な、なんだよ」
「いやぁ?ただ、若いって良いな~って」
「ほんまや、自分にもあないな頃があったわ~」
「加州!明石!主に近すぎるぞ!」
「あるじさま、みんななにをいってるんですか?」
「騒げる元気が戻って来たってことだよ」
朔夜はうんうんと頷いた。
2年の時を経て、一度は光を失った本丸に再び賑やかな声が戻ってきたのであった。