第6章 片思い
辺りはすっかり暗くなり、ぬるい風が頬を冷ましていく
治君が片思いしてたなんて、、、意外だな。
相手はどんな人なんだろう。
ゆっくりと流れる景色を見ながらぼんやりと考える
"何もせんと諦められるぐらいならそれまでの気持ちやったって事"
治君の言葉を頭の中で反芻する
私、今まで信ちゃんの後を追っかけるだけで何もしてなかったんじゃないかな…
気持ちを知られたら一緒にいれなくなるんじゃないかと思うと怖くて何も出来なかった
それにそもそも信ちゃんを振り向かせようなんて考えた事、ないかもしれない…
ーーーーー諦めるも何も、最初から何も頑張ってない。
諦めるのはもう少し先でも、、、いいのかな…。
治君のお陰で何だか前向きになれた気がする。
『治君……ありがとう。』
「え?何て〜?」
『ありがとうって。』
「聞こえへんなぁ?お礼より治君かっこ良い♡って言うてくれた方が嬉しいわ。」
『もうっ、聞こえてるじゃんっ、、』
パシッと大きな背中を叩くと前からケラケラと笑い声が聞こえてきた
その笑い声につられて私もフッと吹き出してしまう
静かな夜道に2人の笑い声が響いて……
気付けばさっきまで落ち込んでた気持ちが嘘みたいに軽くなっていた