第2章 The Light in the Abyssー前編【猗窩座】
「なぜ…泣く?」
「解んない…。でも…嬉しいっ…て…」
宝石でもついばんでるかのように、涙を唇で拾う。
少しだけ、笑みを浮かべているように思った。
「もう…繋がりたい…」
「…ちょうだい。全部…ちょうだい…」
葛けてどろどろに溶かされて、もう受け入れるだけ。
慈しむように熱く撫でられて、内側からせり上がる滾った硬いものが貫いた。
「ああああっ…はっ…あぁっ…」
「ぁ…っ」
脳天をつくような快感で身悶える。きつく抱きしめあって、もう隔てるモノも何もない。
お互いに探していた片割れのピースが必然的に重なるような悦びに打ち震える。
長い余韻に耐えかねて、腰を震わせると、くぐもった息遣いを伴って、規則的な深い突きを与えられた。
汗が上から降って、耳を濡らす。
抱きしめあう肌もいつの間にか汗で濡れて、ぐちゅぐちゅと音を立て始めた蜜の匂いと混じる。
耳の横で握り合った手が、ゴツゴツしてて鍛えている人のそれ。
お互いに跡が出来そうなほどに強くつないだ手が、交わる視線がお互いの感情や熱を痛いほど伝えてきて、
どこか、付き物がとれたように晴れた顔はただ身を焼き尽くすくらいの情愛で包むから、
それが欲しくてその頸を腕から抱き寄せて甘くよがった。
激しく打ち付けるようになる腰、しっかり抱き留められて逃げられないからだ。
声がかれるくらい喘いで、これまでにないほどの熱い交わりに何度気をやっただろう。
溺れ切った快楽でつばも飲み込めずになった時、口角を下る唾液ごと口を犯して、獰猛な欲獣が暴れ出すように腰を打ち付ける。
「うぅ…あ”っ…」
「あああっ」
果てそうになって抜かれた腫れあがった欲望は、お腹の上で散らされた。
腕で手繰り寄せて、まだ滾ったものを口でしごく。
くぐもった声と止める声は押しのけたのは、全部受け止めて愛したいと思ったから。
目を閉じてしまう前に見たのは、憂いを取り払ったような優しい眼差しだけだった。