第2章 偶然か運命か
凛帆の仕事はベッドや歩行器などの介護用品を扱うメーカーの営業だ。東京都内だけではなく近隣の県を回ることも多い。『Z町』の様なお年寄りの多い地域の病院や介護施設だ。
偶然か、運命か、凛帆は突然『Z町』担当を命じられた。
「全然知らない町じゃなくって良かった!お義父さん、お義母さんにも時々会ってくるね。」
「無理はしないでね、凛帆さん。いくら急行で日帰り出来る距離でも遠いには遠い。」
脩二はいつもこうして凛帆の身を案じてくれる。
結婚した後の仕事の件の話し合いでも、
「凛帆さんは無理して働かなくていいんだよ?僕の稼ぎで充分やっていけるのだから。」
「ううん、無理じゃない。大変な事も多いけど仕事、好きなの。続けたい!」
「そうか。凛帆さんの好きな様にして僕は構わない。だけどしんどい時はちゃんと言うんだよ?」
と、凛帆の意志も尊重してくれる。
一人で住んでいる恵比寿のマンションはいつも几帳面に片付けられていて、料理もちょっとしたシェフ並に作れる。
脩二は夫としては申し分のない男性だった。
ある一つの事を除いては――――――――