第9章 結婚前夜
言っていたとおり脩二は宵の口の時刻に部屋へ戻ってきた。しかし珍しく酔っていて足元がおぼつかなかった。
「あいつら、美人で気立ても良くてしかも仕事も出来る凛帆さんと結婚するなんて羨まし過ぎるってさ!相当飲まされちゃったよ!」
「大丈夫?お水………持ってくるね。」
「ああ、お願い。」
凛帆が部屋の冷蔵庫からミネラルウォーターを出してグラスに注いで持ってくると、脩二は上着も脱がずにベッドにうつ伏せになって寝入ってしまっていた。
「もう!脩二さん、せめて靴は脱いで………」
凛帆は溜息をついて上質な羊皮の靴を脱がした。
脩二にはこだわりがあってスーツの時は靴下を履かない主義だった。
「―――――――――!」
裸足になった彼の右足を見て凛帆は息を呑んだ。
その親指の付け根には塞がってはいるがまだ新しい傷跡が……………あった。