第8章 芽生え
それから凛帆は脩一と会うことを避けた。
(一時の気の迷いなの、こんな事続けてしたらだめ………)
身勝手だとは分かっていた。
が『会社の規定が厳しくなったから……』と営業先への送迎は断り、メッセージも無視した。
さすがに脩二が帰国しているから土日に訪ねてくることはなかったが………
いつの間にか季節は巡っていて日も短くなっていた。
凛帆はY病院の訪問を終え、通用口を出るとわずかに暮れ残った夕陽の中に白いRV車と脩一の姿があった。
凛帆は軽く会釈だけして踵を返し、停めたレンタカーの方へ歩き出した。無表情を装ったが胸の中は泡立っていた。
――――突然、凛帆の視界が真っ暗になった。足をもつれさせる様にして体がぐらりと傾いた。
すぐに脩一が駆け寄り体を支えた。
「凛帆!大丈夫か?!」
運良く通用口から勤務を終えた看護師らしき女性が出てきた。女性はすぐに脩一に抱えられている凛帆に気がついて声を掛けてきた。
「どうしましたか?」
「突然倒れてしまって………」
「車椅子、持ってきます!すぐに救急外来へ!」