第7章 帰国
脩二のマンション――――
「まずバスルームでゆっくりしておいで。」
熱いシャワーが凛帆のカラダから滴り落ちる。
が、流しても流してもカラダに沁みついた潮の香りは落ちなかった――――――
――――リビングにはキャンドルが灯り、フランスから脩二と一緒に到着したてのシャンパーニュが冷えていた。
「出発前にローストビーフ作って冷凍しておいたんだ、ちょうど食べ頃だよ。」
相変わらず完璧なエスコートだ。
「乾杯!」
シャンパーニュを飲み、脩二自慢のローストビーフをつまみながら、今夜のコンサートの話題になった。
「女性客が多かったな。アイドルのコンサートみたいだったね。」
「えぇ……………」
凛帆は思い切って訊いた。
「…………終曲の……バラード、どうだった?」
「う〜ん………彼にはまだあの曲は早いんじゃないかな?テクニック的にもさ。アンコールのドビュッシーは良かったね。」
その夜。脩二は凛帆を抱いた。
そしていつもの様に呟く…………
「…………ごめん……」
――――――凪いだ瞳が潤んでいた。
凛帆は少し戸惑った後、白い腕を伸ばして脩二を胸に掻き抱いた。