第7章 帰国
空港からまっすぐ脩二は青いセダンを走らせてきた。
式場のホテルのロビーで凛帆と落ち合った。
「脩二さん、お帰りなさい。」
「ああ、披露宴の打ち合わせにギリギリ間に合ってよかった!」
「疲れているんじゃない?」
「問題ないよ、それより凛帆さん、少し痩せた?」
「………ん、そうかな?仕事………忙しかったからかな。」
「式まであと少しだよ、あまり根を詰めないでね。」
どこまでも凛帆を気遣い、優しい脩二。
その声音を聞く度に凛帆の胸は痛んだ。
脩二の出張前にあらかた二人で決めていたので披露宴の打ち合わせは滞りなく済んだ。
セダンの助手席に座った凛帆に脩二はダッシュボードカバーから2枚のチケットを取り出して見せた。
「もし疲れてなかったら気分転換にこれから行かないか?」
昨年東欧の有名なコンクールで入賞した新進気鋭のピアニストのミニコンサートだ。
「………私は大丈夫だけど脩二さん帰国したばっかりで…………」
「いや、僕は行きたいんだ。凛帆さんと久しぶりのコンサート、楽しみにしてたんだ。」