第5章 ドレス・リハーサル
東京に帰ると、脩二から連絡が入った。
「凛帆さん、ごめん。明後日から一ヶ月、フランスに出張になった!」
「えぇ?!一ヶ月も?」
「今度のクライアントの本社がパリで、どうしても現地で詰めないといけないんだ。」
「明後日?明後日出発だったら今週末の衣装合わせ(ドレス・リハーサル)は?」
「あぁ、それな。兄貴に頼んだ。」
(………!)
『兄貴』と聞いて凛帆の胸が高鳴った。
「顔も身長も服のサイズもほぼ同じだからこの上ない代役だ。」
「え?」
(身長はともかく服のサイズは…………)
凛帆は海辺でTシャツを脱いだ脩一の逞しい胸元を思い浮かべた。
脩二はどちらかと言うと線の細いイメージだ。
「僕の衣装の候補はこの間二人でネットのサンプル画像からいくつか選んだよね?兄貴に着せてみて決定は君に任せるよ。凛帆さんのセンスなら間違いない―――ん?何か問題ある?」
「う、ううん。ちょ、ちょっと残念だけど。」
「凛帆さんのウェディングドレス姿を見るのは式当日のお楽しみにしておくよ。」
――――電話を切った凛帆は深くため息をついた。
(…………どうしよう。)