第4章 夏浅い海
翌週、凛帆は脩一の助手席に乗って施設回りをしていた。
「本当にお言葉に甘えちゃってごめんなさい!」
「なんも、なんも〜〜」
いつもの作業着姿の脩一。
少し開けた窓から吹き込む初夏の風が無造作な髪と車にぶら下がっている芳香剤を揺らしている。
「――――今日は?泊まり?」
「うん、どうしても遅いアポイントしか取れなかったお客様がいて………駅前のビジネスホテルを取ってあるの。」
「なんだべ?ウチに泊まればいいのに!親父もお袋も大歓迎だし。」
「お気持ちはありがたいんだけど会社の規定があって………。」
凛帆は軽い嘘でうまくお断りをした。脩二とちゃんと結婚するまで『けじめ』はつけておきたかったのだ。
「そっか………じゃあ仕方ねえなあ………
そしたらさ!夜、食事奢っからさ!夕方ビジネスホテルに送ったら俺車置いてくっから、駅前の『潮亭(うしおてい)』の前で待ってて。」
この町の店はまったく分からなかったから夜はコンビニのお弁当で済まそうと思っていた凛帆はありがたくこの好意を受け取ることにした。