第2章 偶然か運命か
「うわっ!」
凛帆から飛び退ける事務長。
「ちわっす!電気屋っす!
ここっすか?電球切れたのは。」
威勢良く入ってきたのは脚立と電球を携えた『脩一』だった。
(お、お義兄さん!)
「な、なんだね?!勝手に入るな!」
「いっつも電球切れたら勝手に入って勝手に取っ替えてたじゃないっすか、ジムチョさん?
今日は何か勝手に入っちゃ困ることあったんすかー?」
脩一は白い歯を見せて笑い、ソファに座り直した凛帆に向かって「よ!」と右手を上げた。
「し、知り合いかね?」
「ん?知り合いも知り合い。今度ウチに嫁に来る人だよ。な?」
事務長の顔色が変わった。
「これはこれは。手代木先生のところのお嫁様でございましたか―――」
態度もガラリと変わり、媚びる様に揉み手をする事務長。
「カタログ、拝見してさっそく発注かけますんで、どーぞこれからはよしなによしなに……‘」
電球を替え終わった脩一は唖然とする凛帆に軽くウィンクして部屋を出て行った。