-Short Dream Story Collection-
第1章 【呪術廻戦 合同リレー夢】「思い出は薄氷の上に」夏油傑
振り返ったと目が合うと、七海は目を細めてを見た。
……生きていた…。
そんな安堵の気持ちから、目線を俯かせると、ゆっくりに向かって歩いて来る。
呼ばれた声は知らない声だった。
顔を見ても、やはり誰だか分からない。
なのに、人混みを掻き分けて、真っ直ぐ自分の向かって来る男性を見ながら、この胸は確かに痛んだ。
どんどん自分に向かって来る見知らぬ男の人に、はゆっくりと目を伏せて涙を一雫だけ流した。
の目の前に来ると、七海はゆっくりと奈緒の手を握った。
幻ではないか確かめる様に、の手に温もりを感じると、やっと七海はが生きていたと実感した。
「……生きていて…良かった……。」
ポツリと七海が溢した言葉に、胸がぎゅうっと締め付けられて、涙が溢れてきた。
記憶が無くても、何の説明も受けなくても分かる。
この手の温もりが自分の居場所だったと、ハッキリ教えてくれる。
は握られている手を払わないで、もう片方の手で自分の涙を拭った。
「……あの……私……、記憶が無くて…貴方の事分からないんです…。」
の言葉に七海はびっくりした顔をすると、俯いているの表情を見て、が嘘を付いていないと理解した。
「…自分の名前は?」
「…教えて貰ったので知っています…。自分が今まで呪術師をやっていた事も…呪霊に飲み込まれて記憶を失った事も教えて貰いました。