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星の還る場所(短編集)

第1章 [十戒]好きでもいい理由が1つでもあればいいのに[轟焦凍]


大勢のメイド達に囲まれ、とある女性がコルセットを巻かれていた。
メイド達がどんなに強く引っ張っても彼女は表情1つ変えることなく、ただただ静かに両手を横に上げるポーズを取ったままだった。

そんな女性の姿を見た瞬間、メイド達はさまざまな反応をした。

1人は泣いて顔を覆い、1人は泣くメイドを慰めながら自身も目を潤ませ、1人は涙目になりつつ唇を噛み締めて悔しそうに顔を歪ませ……。三者三様に見えるものの、実際にはメイド達の根本的な反応は同じだった。

それに対してメイド達の主人と思わしき女性は無表情を貫いているものの……、よくよく見ればその目には光が無かった。深淵が広がる沼地のようにどんよりと暗く、絶望で埋め尽くされていた。

そんな暗い瞳の主人が身に纏う服は純白の綺麗なレースに薄ピンクの花飾りが咲き乱れる、それはそれは美しいドレスだった。日常的に着るようなデザインでないそのドレスの横には白いレースで作られたベールとピンクの花を束ねレースで包んだブーケが置いてあった。

その服は何処からどう見てもウェディンセットだった。
ドレスについている花飾り1つ1つが細かく細工されており、職人が丹精込めて作った傑作だとわかる。
そのドレスの横には『愛するに捧げる』と一言書かれた手紙が置いてあった。

高値のドレスをプレゼントされたにも関わらず、何故か主人やメイド達は泣き続けていたのだった。
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