第11章 じゅういち

　「何を今更」
　「すまない」
　「謝ってばっかり」
　「それは、…それはだな。…反省してるんだよ、つまり」
　「じゃあ許す」

　顔を上げると、鶴さんのキラキラした目が私を映していて、何だかホッとする。

　「許すって言ったの」

　可愛くないな、私。

　「あぁ」
　「あぁって何？」
　「あの、抱きしめても構わないか？」
　「は？」

　さっきはそんなこと聞かなかったくせに。

　返事を聞く前に、鶴さんで視界がいっぱいになる。

　「ちゃんと過去と決着をつけてきたんだ。もう君を不安にさせない、絶対。君を傷つける言葉をあえて使ったりもしない。今までの言葉に上書きするつもりで、これからは励む」
　「ふぅん」
　「信じてないな？」
　「勝手にすれば？って、思っただけ」

　ぎゅっと、鶴さんの装束の腰裾の方を掴む。

　「あぁ。勝手にする。…気付かないフリして悪かった。好きだ、…違うな。そんな軽い気持ちじゃない」
　「…」
　「大好きだ」
　「っ」
　「愛してる」

　泣けてくるのが、悔しい。
　鶴さんが中途半端な手袋を外して、私に触れる。

　「何を言っても泣くんだな」

　優しく私の涙を拭う。
　余裕そうで悔しくて、大きなその手のひらに擦り寄る。

　「愛してる」
　「…ん」
　「愛してる」
　「…わかったってば」
　「今までの分、伝えようと思っただけなのになぁ」
　「言い切っちゃうつもり？」
　「いや、何度言ってもいいたりないだろうな」
　「愛してる」
　「あんぽんたん」
　「愛してる」
　「もういいってば」
　「やっと言えたのに？」

　本当意地悪な顔してる。
　このやりとりを相当楽しんでる。

　しつこいと、襟首を掴んで背伸びする。

　「愛して…んっ、」
　「聞き飽きちゃうから」

　素直じゃないのは、あなたのせい。

　「反則」

　頭の後ろに、手が回る。

　「先にしたのは、君だからな？覚悟しろ…って、その前に」

　あと数ミリ、もう少しで触れそうな距離なのに鶴さんがそっとその手を下ろす。

　「聞かせてくれないのかい？こんなことする君の気持ち」
　「…最初振ったくせに」
　「俺も白状したじゃないか」
　「…」
　「愛して」
　「もういいってば、わかった。恥ずかしい」
　「恥ずかしいことないだろ？…わかった、無理強いも良くないもんな」

　儚げ美人詐欺。