第7章 前夫
お鍋は翔とだけやるのではなかった。
直樹とも頻繁に寒くなるとお鍋をやっていたのだ。
土鍋を取り出し水を鍋に張る。
直樹から姫昆布と言う早煮昆布を大量に貰っていた。
直樹の田舎は北海道だった。
そこで、良く姫昆布が取れるのだそうだ。
その、昆布をおばあちゃんが沢山毎年送って来るらしい。
余りにも大量なので、私の家にもその昆布を置いていったのだ。
その昆布を鍋に入れて出汁を取る。
続いて、鶏の手羽先4本を鍋に入れて弱火でコトコト40分くらい煮込んでゆく。
40分も煮込めば食べた時、鶏肉がホロホロととろける様になるのだった。
その間、白菜、長ネギ、春菊、鶏肉、豆腐を食べやすい大きさにカットしてゆく。
それを、40分煮込んだ手羽先が入っている鍋に綺麗に盛って入れてゆく。
最後に、しめじ、えのきの礎を取り、食べやすい大きさにバラしてゆき鍋に入れる。
弱火でコトコト野菜がしんなりするまで煮込めば出来上がりだった。
私の家では、お鍋はポン酢で頂くことが普通だった。
夕方6時ころ、我が家のチャイムが鳴った。
犬のマルが嬉しそうに玄関先まで出て行った。
マルは翔の事が大好きだった。
なので、翔と会えるのが嬉しかったのだ。
玄関を開けると翔が立っていた。
「久しぶり、元気だった?」
「うん、元気よ。さ、中に入って頂戴」
こんな会話をしていると、まるで普通の夫婦の様だった。
友達の関係だと上手くいくのに、夫婦関係にはなかなかなれない私たちだった。
「折り畳み自転車、玄関先に置いておいていいかな?」
「ええ、いいわよ…」
そんな、会話があり翔は我が家に上がって来た。
これから、愉しいひと時が始まるのだった。