第3章 Therapy2回目
週始めの朝礼。
「おはようございます。
今朝はおめでたいお話からお伝えします!」
(部長…………何だろ?)
「我が部の林玲奈さんがめでたく来月寿退社されます!」
(えっ!ええええええ―――――?!)
おぉ―――という歓声と同時に部の皆が一斉に私を見る。そして拍手。
「おめでと―――」
「知らなかった――よかったね―――」
(……ちょ、ど、どうして?!)
「皆さん、心から祝福して送り出してあげてくださいね。では今週の予定………」
「部長!ちょっ、待ってください!!」
朝礼の後、廊下で部長を呼び止めた。
「何?忙しいんだけど……」
部長は早足を止めない。
私は必死で追いかけながら、
「わ、私辞めるなんて一言も言ってません!結婚するともっ。」
部長はぴたと足を止め眉間にシワを寄せて私を見た。
「君が恥をかかない様に配慮してやったんだよ!礼を言うべきだ。
あと来月から君の替わりに若い派遣の女のコが来るから引き継ぎしっかりやる様に。」
(ひ、ひど………い………)
立ち尽くす私にプイッと背を向け、部長は去って行った。
ヨロヨロと自席に戻ってPCを開けると、メールがたくさん届いていた。
『ご結婚おめでとうございます!』
『送別会兼お祝い会♡のお知らせ』
『悠々専業主婦♡うらやましー』
『もしかしておめでた?』
『退職プレゼント二択:圧力鍋かベビー服』
『おめでとう』
『おめでとー』
『おめで…………
どれも悪意のないものだけど今の私には酷でしかない字面…………
(だけど突然すぎるよね――)
(所詮「腰掛け」だったのよ。)
(やっぱ「できちゃった」?)
(大人しそうなのに、じ・つ・は?!)
そんなヒソヒソ声も聞こえてきた。
私はPCを閉じると――――
――――――――会社を飛び出していた。
そして数時間、あのマンションの前に立ち尽くしていた―――――