第3章 すれ違う思い。
『お久しぶりです、太宰さんに逢いましたよ。変わらずでした。』
返事は返ってこない。
当たり前だ、私は"S.ODA"と彫られた墓石に話しかけているのだから。
毎年命日にはここへ訪れるようにしている。
『太宰さん今探偵社で働いているらしいです。織田作の望んでた通りに人を救う仕事してるみたい。』
花を手向け、少しお話をして去ろうとすると人影を感じた。
太宰「おや、やはりちゃんだったのだね。毎年花を手向けに来てくれていたのは。」
『太宰さん、どうも。』
あまり驚きはしなかった、何故だか太宰さんに逢う予感がしていたから。
太宰「ふふ、織田作も喜んでいるよ。ありがとう。」
『いえ、お世話になっていたので。』
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初めて織田作と出会ったのは太宰さんに連れてこられたバーだった。
織田作「太宰、お?今日は連れも一緒か?」
太宰「やぁ、織田作。そう!ちゃんだよ!」
織田作「勝手に連れ出していいのか?首領の娘だろ?」
太宰「社会見学さ!ちゃん、彼は織田作。私の友達だ!」
『太宰さんの友達?』
この頃の私は"友達"の意味すらも判らなかった。
織田作「ぁあ、織田作之助だ。宜しく。」
『宜しくお願いします。』
太宰「ふふ、これでちゃんのお友達が増えたね!次は安吾を紹介しないとね。」
『私の友達?』
織田作「おい、太宰。困ってんだろ。何飲む?」
何も答えられなかった。何を飲んだらいいのか判らなかったから。
織田作「オレンジジュースでいいな?」
訳もわからずに頷く私。
オレンジジュースを飲んだのはこれが初めてだった。
少し酸っぱくて、でも甘くて美味しかった。
あっという間に飲み干してしまった。
織田作「美味いか?」
『オムライスと一緒。』
織田作「オムライスが好きなのか、なら今度美味い店連れて行ってやる。」
それから私は織田作に沢山のことを教えてもらった。
あの悲劇が起こるまで、、、、。