~たゆたううたかた~【禪院直哉/R-18/短編集】
第5章 ごっこ遊び 【禪院直哉】
304号室に…到着して
そのお部屋の中に入ると。
真っ赤なソファがL字に配置されていて。
長い方が5人掛け短い方が3人掛けと
かなりの人数が座る事が出来る
リビングスペースに。
そのソファで座って観られる
超大型のテレビがあって。
リビングの前には
小さなちょっとしたキッチンと。
部屋の角を利用した
扇形のカラオケステージがあって。
そのステージには
トルソーにディスプレイされている
赤の花魁衣裳と紫の花魁衣裳がある。
『見てんや、ちゃん
安っちぃコスプレ置いてあんで』
風俗店のオプションの様な
サテン布地の…如何にもな
花魁衣裳で…。安っちいと
直哉様が言うのは…如何にもコスプレ
コスプレしてるからなんだろうけど。
ステージの部分は
後ろと上が柄になる様に
切り替えられた鏡張りになっていて。
『何か1曲…歌ってぇや』
「嫌ですよ…、歌なんて…」
『折角ステージあんのに
使わへんの勿体ないやん…。
じゃあ、後であれ着て
このステージで立バックしようや。
あっちの壁…見てんや。
スタジオみたいな壁紙やろ?』
そう言って入口側の壁を
見る様に促して来て
入って来た側の壁に向き直ると
今まで見えてなかった
手前の壁面が見える様になって。
その壁は…5色の…
花鳥風月…の和柄の背景になっていて。
それぞれ色と柄の違う背景で、
撮影を楽しむことが出来る。
『ちゅーことやから…、
あっこの壁バックにして
その恰好で写真何枚か撮ろうや。
あそこやったら…出来へんポーズとかも
ここやったら…し放題やろ?』
「でっでも…お借りしているこちらを
汚したり…皺になったりしては…」
『汚したらクリーニング代…
出せばええこっちゃろ?
誰もぶっかける…言うてへんやん…。
ほんまもんの花魁かて、
その恰好で夜の相手せぇへんやん』
そう直哉に言われてハッとする。
確かに…そうだ…この
豪華絢爛で煌びやかな衣装で
そっちの接客をする訳ではないんだった。
お客さんと…床に入る時には
朱赤の長襦袢姿になってる…。
「朱赤の長襦袢……」
『床入りする時は…それだけやん…?
女なんか…高いべべ着て着飾ったかて、
どうせ…男に全部ひん剥かれて
素っ裸にされてまうねんから…一緒やん』