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~たゆたううたかた~【禪院直哉/R-18/短編集】

第5章 ごっこ遊び 【禪院直哉】



廊下に座り込んだままで、
はぁ~っとはため息をついて。
ちょっときもちが落ち着いて来たら
動けそうになった来たので。
ゆっくりと…その場から立ち上がって
そのまま自分の部屋に戻ろうとした。

『しばらく動けなくなって、
腰抜けちゃうほど…激しいキスだったの?』

声の方を見ると…腕組みをして
こちらに見下すような視線を向けてくる。
アグレッシブな…花嫁候補の
千夏さんの姿があって……。

私が腰を抜かしたみたいになったのは
直哉様のキスよりも…
囁かれた内容の方なのだが……。

千夏さんに見せつける為に…
わざとそうしたに違いない…。
あの禪院直哉と言う人はそう言う人だ。

『直哉様の…嫁になるのは…
私なんですからね?アンタは…
大して顔も美人でもないし、
弥生ちゃん程おっぱいも大きくないしね…』

「顔は確かに…澪さん程
取り立てて美人でも…ないですが、
見苦しくない程度…だとは…思っていますが。
それに…胸のサイズなら…、
貴方も私と同じぐらいですよね?」

多分見た目的なスペックから
私もこの千夏さんも大差はない。
大きな差があるとすれば、
直哉様の妻になる事に
積極的か消極的かの違いだ…。

『何なの…?…アンタっ
よくも、言ってくれたわね?』

「それに…直哉様のキスがどうかは…
千夏さんの方が…ご存じですよ…きっと」

ではと…千夏に頭を下げて、
そのままスタスタと横を通り過ぎた。

めっちゃ視線が背中に刺さってたから
凄い形相で睨まれてるんだろうけど。

私は直哉様にもっとキスをしてくれも
もっと抱いてくれだの強請らないし…。
さっさと…終わってくれと…言いたいけど
それは…怖いから言いたくても言えない…。

それから…自分の部屋に戻ったら
ニコニコ顔の直哉様が
部屋の真ん中で寛いでいて。

「なっ、何で…私の部屋に居るんですかッ…」

『なぁなぁ…どやったどやった?
千夏ちゃん、どうやったん?
なぁなぁ、ちゃん
教えてぇ~やぁ。ちゃんが
さっき何あったか、俺に教えてくれたら
俺も大人しゅう自分の部屋戻るし…?』

ああ…、もう…最悪だ…この人。

全部分かっててやってて、
それを…全部…愉しんで…る。

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