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~たゆたううたかた~【禪院直哉/R-18/短編集】

第4章 カゴノトリ番外編 ~水辺の離れ Calme~ 【禪院直哉】



『トビウオ…そんな高い魚ちゃうけど
刺身は日本酒によー合うわ』

トビウオは…その名の通り
羽みたいなヒレで飛ぶお魚……で。
全身が筋肉みたいな感じだから
脂がほとんどなくて
身が凄い締まっていて弾力があるのだそうだ。

美味しい…お刺身を頂いている間に
さっきの白イカが活け造りに
なって出て来て…。まだ足が…
動いていて…、キラキラと
透き通った身体が輝いて見える。

1人に1杯…活け造りがつく
お食事のプランみたいで…。
ゲソの部分は…後で天ぷらにしてくれる
のだそうで、それも絶品なのだとか。

『イカなんか…そない大して
美味いもんちゃうやんって
俺も…活け造り食う前は
思っとった口やけどな…。
これ食うてしもたら…普通の
その辺のイカ食われへんで?』

そう言いながら豪快に
イカを纏めて箸で掴むと
醤油に付けてイカを頬張っていて。

『自分も食べてみいや』

ここまで来たのも…これを
食べるのが目的だった位だ…。
よっぽど美味しいに違いない…。

それにしても…こんなにスケスケで
綺麗なイカが…美味しくないわけがない。

まだ…動いている胴体部分を見ると
忍びない気持ちになりながらも。
自分の箸でイカの身を摘まんで
お醤油をちょんちょんと付けて
自分の口の中に入れる。

「んんん~~ッ!!」

思わず…その美味しさに…
声が出てしまって居たのだけども。
コリコリとした食感と
甘さが…口の中で広がって…。
今まで…自分が食べていたイカは
別の生き物なんじゃないかって言う
直哉様の言葉を秒で理解できたのだが…。

『な?イカヤバいやろ?』

始めて食べたトビウオのお刺身も
びっくりする美味しさだったのだが。

イカの活け造りは…衝撃的な
お味…でしか無かった…。

こんな…美味しい物…あったんだ…。

「凄い…美味しい…ですぅ…」

『そら良かったわ。わざわざ
久美浜まで来た甲斐があったで』

その他にも…鮑の踊り焼きと
但馬牛のステーキもあって…。
後から出て来たイカゲソの
天ぷらも凄い美味しかった。

美味しいお夕飯で…
お腹がいっぱいになって…
また送迎車で…本館から
離れのカルムまで送迎して貰う。

すっかり…その頃には
陽が落ちて暗くなって居て。

明るい時間とは違った顔になっていた。



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