第3章 つよがり いいわけ かよわい子
お昼。
生放送での記者会見が流れるのが見たくて、自分のデスクでこっそりスマホを使う。Bluetoothのイヤホンに音を飛ばし、書類を片付けながら番組を流し聞きする。
選手紹介が流れてくれば、合宿で話をしたことのあるメンバーや、全国大会で名前を聞いたことのあった当時から有名だったメンバーがテレビの画面にいることに自分の当時の環境に驚き、改めて感心する。
そして…
「リベロの夜久衛輔です。」
聞き馴染みのある声に視線を向ければ、つい先程まで会っていた顔。なのに、髪をかきあげ大人びた顔で笑う姿に思わず胸を高鳴らせる。
周りとの掛け合いの声や司会の質問に答える声に頬を緩ませながら仕事をしていれば、後輩から声をかけられた。
夜久も頑張ってるんだから頑張ろう。
そして今日会えたら、会いたかったって正直に言うんだ。
そう胸に秘めながらイヤホンをケースにしまい端末の画面を閉じると、再び私の戦場へと向かったのだった。