第2章 つよがり いいわけ いとしい子
「おかえり、飯できてる。」
部屋の奥から出てきたのは久々の本物の夜久のはずなのに、同棲しているようにな口ぶりに思わず吹き出す。
「ただいま。夜久もおかえり。」
パンプスを脱ぎ室内に入るが、夜久は玄関から動かない。どうしたのと問い掛ければ、にまり、とした笑みと共に耳元に唇が近づいた。
「そのワンピース可愛い。化粧もそれに合わせてくれた?すげえ似合ってる。」
…ずるい。
そうよ。貴方が可愛いって言ってくれるのがわかっているから、いつもは手を伸ばさないような可愛らしいワンピースにしたの。
化粧もいつもより気合いを入れたし、仕事の時にはあまり使わないラメを使ったりして可愛くしたの。
全部気づいてくれることが嬉しくてそのまま鍛えられた胸板に飛び込むと背中に腕が回る。力強くて暖かい手、それは私の腰を抱き、再び耳元を息がくすぐる。
「飯もいいけど夏乃も食いたい。我慢しすぎて暴発しそう。」
すり、と重なった体の中心が押し当てられればぴく、と肩が跳ねる。
お腹は空いた。
でも、夜久が足りない
首に回した腕を引き耳に唇を寄せる。
そして呟いたのは同意の言葉。
それと同時に浮いた体はそのまま寝室に運ばれていったのだった。