第5章 大切な… * 氷室辰也
ガチャッ…………
「おかえりタツヤ。」
氷室「ただいま、。」
「ごはんできてるよ。どうする?」
氷室「わかった、先に食べるよ。」
オレとは先日結婚式を挙げたばかりの2人。いわば、「新婚」というわけだ。
オレの大切な。
とは大学で会った。
〜回想〜
オレと同じ学校·学科にいた彼女。
オレの顔目当てで寄ってくるオンナの波に飲まれて、廊下を進めなかったところを助けた時、初めて声を聞いた。
「ありがとうございます。でも、この状況を作り出しているのはあなたですけどね。」
ペコリと頭を下げた後、彼女はオレの前からいなくなった。
……正直驚いた。
いきなりそんな事を言われるなんて考えていなかったからね。
その時から彼女が気になりだしたんだ。
彼女は凄い人だった。
人の意見を尊重し、でも自分の意思もちゃんと伝える強い心を持ち、
悪いことはたとえ先輩であっても言いきる善悪の判断能力も持ち合わせていた。
人間として大切な事をちゃんとわかっている彼女。
……だからといってただ厳しいだけではなかった。
その厳しさは優しさからきているものだと、周りは皆わかっていたから。
そして何より…………
普段厳しい彼女が、時たま見せる笑顔が何よりも好きだった。
………気づけば、いつもそんな彼女を目で追いかけていた。
………こんな感情初めてだったんだ。
自分はいつの間にか、彼女に対して他の誰にも無い特別な感情を抱いていた………