【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第5章 高架の向こう側
「けどそれはもう難しいかな、とも思うから…
十亀君、しばらく沙良を頼めるかな。前回の配達の時の事もありがとう。
以前商店街が襲撃されて大変だった時も…力になってくれたチームだろう?しばらく様子を見て、大丈夫そうなら…また前みたいな生活に戻していこう。」
『…っ……』
思わず十亀さんを見ると、微笑みながら頷いてくれた。
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「快人と色々話せたよ…
俺が今でも大事な友達だって思ってる事も、途中からであっても…何でラートルに入らなかったか、とかもね…」
『……蓬莱さんから…主役を奪いたくなかったんじゃないですか…?』
蓬莱さんの力を信じていたからこそ、ラートルに入らなかった。
自分がいない方が、蓬莱さんが輝けると思った…
私にはそんな風に思えた。
「ふふっ…怖いなぁ、沙良ちゃんは…
けどね…それだけじゃないんだ。」
『………?』
「快人はずっと俺に憧れてた、って言ってくれた。
けど…それは俺の方。」
仲間を大切にしていた快人。
仲間から慕われて、いつもチームの中心にいた快人。
どんなに勝てなくても仲間を見放さなかった。
思いを貫いた。
俺には
できなかった…
本当にかっこ良かったのは快人、お前だ。
『十亀さん…?大丈夫ですか?』
「ふふっ…大丈夫。
沙良ちゃん、明日からまた…ポトス、行ってみようよ。迎えに来るね。」
『…ぇ……っ………はいっ。16時でもいいですか?』
ニコリと笑った十亀さんを送り出し、ポトスを見つめた。
店内の優しい光が漏れていた。
賑やかな声。
美味しそうな香り。
全部覚えている。
皆、元気かな。変わりないかな。
梶君は…元気かな…
梅くんも…
早く明日になるといいな…
少しドキドキしながら、ゆっくりと眠りについた。